総評
審査委員長 一般社団法人 日本デザイン保護協会
専務理事 本多 誠一
第40回「プラスチック日用品優秀製品コンクール」が開催された。今年も昨年から引き続く新型コロナウイルス禍の中で行われた。ただ、そうした厳しい状況にもかかわらず、昨年並みの21社から、54点の様々なアイテムの製品の応募があった。
今回も、機能的で洗練された造形、生活を豊かに充実させ、暮らしを楽しくさせるアイディアと工夫に溢れ、また、環境配慮等SDGsに対応するものなどさまざまに優秀な製品が多数見受けられた。応募企業の製品開発・デザイン開発に対する強い意識と日本のものづくりのレベルの高さを感じることができるコンクールである。
今回、特別大賞の「経済産業大臣賞」には、リス(株)の「REMUTEリミュート 卓上吸音ボックス」が選定された。
この製品は、オフィス等でのテレワーク時に、机上に置くだけで簡易な疑似個室を形成する卓上吸音ボックスである。表面の微細な開孔による吸音効果を持つ板材とフエルト系吸音材を組み合わせることにより、人の声の雑音を効果的に軽減でき、かつ折り畳み式で移動、組立て、収納が簡単にできる優れた製品であり、審査委員から高い評価を受けた。
そして、大賞の「経済産業省製造産業局長賞」には 、(株)台和の「バイオマスメラミン製食器 Aube(オウブ)SJ-10,SJ-20」が選ばれた。農作物から出る非食用部(未利用バイオマス)を使用した環境に優しい製品であり、食器洗浄機にも対応できる日常使いの手軽な食器でありながら、落ち着いた自然な色合いの美しい形状にまとめ上げた点が、審査員から高い評価を受け選定された。
そのほか各協賛団体の賞として、「(一財)生活用品振興センター 理事長賞」には、新輝合成(株)の「3wayバケツ 中バケツ付S18」が、本体バケツに収まる中バケツを設けて洗車用品等をコンパクトに収納し、かつ踏み台や腰掛けとしても利用でき、さらには中バケツ内側に洗濯板、両バケツにホース止め部を設け、多数の機能を一つの道具としてまとめ上げた点で実用性、利便性に優れていると評価され、「(一財)日本ファッション協会 理事長賞」には、(株)吉川国工業所の「シールズ45 密閉ダストボックス<LBD-03>」が、蓋正面の幅広いスイッチ部と大きな開口部、左右両サイドに配した浅い手掛け凹部など全体を柔和で凹凸の少ない一体感のある美しい造形とし、また蓋裏面の隙間ないパッキンの密閉構造でにおい漏れ防止にも優れ、かつ室内に馴染む淡いホワイトとグレーの優しい色合いに仕上げたことなどを総合的に評価されて選定された。
また、「(一社)日本流行色協会 理事長賞」には、八幡化成(株)の「ハチマン ガーデンズ エコプランター オーバル400,490 / エコポット角型ロング190,230」が選ばれた。天然素材(木紛・古紙)を配合しつつプラスチックの持つ強度や軽量さを兼ね備えた環境配慮型の製品であり、かつその土に帰る素材を混ぜることを素朴な手触りの素材感や少しくすんだ人に優しい色合いでそのまま表現し、地球環境保全への思考を誘うデザインである点が高く評価されて選定され、「全日本プラスチック製品工業連合会 会長賞」には、リス(株)「HOME&HOME 棚下で使えるペダルダストボックス20L/35L/45L」が選定された。コロナ禍での衛生管理にも有効なペダル式で手指等に触れずに開閉操作でき、軽い踏み心地で短辺方向左右に開くツイン蓋の構造がキッチンの棚下やカウンター下など蓋上方空間が狭い場所でも自由に配置できる点が高く評価され選ばれた。
次に、奨励賞として、「(一財)生活用品振興センター 奨励賞」には、イノマタ化学(株)の「冷蔵庫米びつ 2kg」が、冷蔵庫内で縦置きも横置きも可能な便利な製品としている点で、「(一財)日本ファッション協会 奨励賞」には、オカ(株)の「プリスベイスウィル タンブラー」(洗面所用コップ)が、大きなハンドルの指通しのよさ、フックに掛けると自然に水が流れる造形に、ホワイト、グリーン、ブラウンの美しい新色ラインアップを加えた点で、また、「(一社)日本流行色協会 奨励賞」には、(株)台和「デュアル Mサイズ・Sサイズ」(保存用蓋付き容器)が、柔らかいフォルムで洗い易く、くすみカラーでキッチンに彩りを演出する見せる収納製品に仕上げた点で、「全日本プラスチック製品工業連合会 奨励賞」には、岩崎工業(株)の「H-600とっても強いケース&スプーン・18cm箸付き」が、コロナ禍で見直されているマイ箸・スプーンを、つかみやすい太めの柄、先の薄い掬い形状、携行時のカチャカチャ音防止機能付きの丈夫で洗いやすいケースの設計、抗菌加工も施された点で、それぞれ優れているとして選定された。
そのほか、優秀賞として、コロナ禍で欠かせないマスクを衛生的に収納し上蓋を小物置皿にした収納ボックスを再生プラスチック60%使用で環境に配慮しつつ堅牢・精巧な造りとした国際化工(株)の「メリーナ ゆ・ら・ぎシリーズ M726Sマスクボックス」と、コロナ禍の在宅時間で需要が増えたコーヒー豆等をワンプッシュで簡単に密閉、保存できる、スケーター(株)の「POS5 プッシュボタン付密閉保存容器」が選定された。
以上、特別大賞として経済産業大臣賞1点、大賞として経済産業省製造産業局長賞1点、及び協賛団体の理事長賞又は会長賞が各1点ずつ計4点、協賛団体の奨励賞が各1点ずつ計4点、並びに優秀賞2点の、総計12点の優秀製品が選定された。
受賞製品は、いずれも従来製品に比べて実用性や利便性が向上し、生活を豊かにするだけでなく、環境配慮を含めSDGsなど時代の要請や新型コロナウイルス禍での新たな生活様式に対応しようとする優れた製品であった。
本年のコンクールも、引き続く新型コロナウイルス感染の波が押し寄せる最中に募集が開始され、また、審査会も当初予定した会場が感染発生で使用できず急遽変更となるハプニングなどもあったが、事務局の臨機応変な対応で無事に開催することができた。
10月になり、我が国の新型コロナウイルス感染者は、オリンピック・パラリンピック時の感染大爆発からは大幅に減少したが、この間、無策の「自宅療養」という名のトリアージによって身近な日常に死の恐怖があることを知った。ワクチン接種、治療薬の開発・普及によって次の災禍の波は抑えられるか、乗り越えられるか未だ定かではないが、過去の歴史をみれば人類の知恵にある程度期待してよいかもしれない。
しかし、茹でガエルの警句を思い出せば、新型コロナウイルス禍以上に大きな人類の課題である環境問題への対応は、喫緊を越えて既に崩壊のカウントダウンが進んでいるとも言われる。
資源やエネルギーの問題等様々な要因が絡むプラスチックの取り扱いについても、2030年までにすべてのプラスチックを再利用や回収可能なものにする方針が既に示されている(2018年6月G7首脳会議採択「海洋プラスチック憲章」、日本未批准。)など、企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みがさらに一層厳しく求められるようになっている。
プラスチック日用品業界においても、厳しい国際競争で勝ち抜くためには、素材や製品の開発を機動的、効果的に行うことに加え、そうした社会的ニーズにも応えて消費者に選ばれる魅力的な製品を生み出す努力を続けなければならない状況にある。
しかし、それは反面、複雑多様な社会的ニーズに対応できるハイレベルな日本のモノづくりの力によって、コスト競争で勝る新興国等海外勢を凌ぐことができることを意味する。使い捨てではない、他の素材にない特性を活かした優良なプラスチック製品はまだまだ必要とされる。本年の入賞製品をはじめとする応募製品には、様々な工夫と努力によってこうした状況を乗り越え、社会のニーズに応え、顧客の満足するより良い製品を開発し続けようとする粘り強い企業姿勢がうかがえる。
今後も、歴史あるこのコンクールが、プラスチック日用品業界のそうした積極的な取り組みを応援するものとなるようにしていきたい。













